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メディアアート生活

美術館に作品を見に行かなくても、町中に作品は溢れている。話しかければその人の宇宙が始まる。

「いってらっしゃい」

 

「それでもそこに行くの?」

 

そう問うたけど、
ただ微笑むばかりで、
何も答えなかった。

 

明らかだった。
そのことはわかっていて。

 

それでも、言葉を続けた。

 

新雪に足跡を残すように、
既に或る一点で決断された尊い選択は、

 

もう誰の声も届かないところに、
そっと保管されていて、

 

―0地点/真白/無音/均衡-

ソレデイテ、アタタカイ

 

<立ち入れない:立ち入らせやしない≫

 

それは、
君の優しさであって、
戦いであって、
決着であって、
罰を引き受けるという
自虐的な献身であって、

 

誰も追いつけない果てまで走りきって、
望みのない、
光のない、
その混沌の痛みの中でしか、
安寧は見つからないのだと。

 

目をそらして話すその姿は、
そう物語っていて。

 

運命を全て引き受けて、
業火の後の残骸に、
救済の欠片を探しにいく。

 

安らかに表情は語る。

―未来が変わらないことは自明のようだ―

 

『帰ってくるまで、
待つことしかできない』

 

そうでなければ、
癒されることはないのでしょう?

 

それまで僕ができる最善策はきっと、
自分の無力さから目を背ける努力だったり、
忘れてあげることくらいだろうと、

 

そう言い聞かせるしかない事実が、

ここにある。

 

それでも、

「そう」なるであろう未来に向けて、
言葉を紡いだ。

 

 

既に言葉は魔力を失っている。

 

それでも、

そこにある運命を互いに確認するためだけに

僕らは話をする。

 

「これは必要な儀式だ。」
その暗黙の了解の中で。

 

そして僕は、全てを独りで終えるまで

もう見ることは出来ない後ろ姿を見送った。

 

 

 

 

僕は無力だ。

でも、そうすることが君に対する最大の尊敬だと、

その時はそう思えたんだ。

 

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