Ⅴ→Ⅰ
波は不定形にリズムを繰り返す。
意志を持って打ち寄せ、
衝突し
、砕けて、
大きく歪み
、うねり、
泡になって
、溶かして、
穏やかに受け入れる。
海の記憶。
光と出会った。
深く潜った。
雨に出会った。
渦を巻いて荒れ狂った。
その時の記憶。
とどまらず形を持たず
変化し流れゆく、
その刹那-瞬間を切り取った、
刻を本当はどこか覚えている。
だから全てを許してしまえる。
出会ったものを癒して、手放していく。
青だった時の、
蒼だった時の、
碧だった時の、
記憶。
それらを本当は全部残しているから。
だから、わかる。
出会ったものの痛みが。
凪。
それは、
何も無いのではなく、
全てを受け入れた無。
飲み込まれ、抱きしめられ、
手放された時に、
全ては許されて消えていくだろう。
海の意志によって。
それを優しさと呼ぶには、
あまりに残酷すぎる。
それを愛と呼ぶのは、
あまりにふさわしすぎる。
今日も、風は吹く。
波は、寄せてはまた返す。
それが、当然だという顔をして。